The Seduction of Claude Debussy (1999)

 昨年から「ジャーナリスト宣言」というコピーで朝日新聞がキャンペーンを張っております。あの大新聞社が何を今さら「ジャーナリスト宣言」...という感じなのですが、新聞社と言え普通の企業なんなんでしょうね。なにかこう釈然としない部分はあるんだけど、TVでのCMには直接的な言葉と映像が絡んで、いやでも耳に、そして網膜に残る。

言葉は感情的で、残酷で、時に無力だ。
それでも私たちは信じている、言葉のチカラを。

 昨年末から新しいTV CMが流れ始めた。平和ボケの日本と、戦争に塗れた(まみれた)どこかの国の日常が映像で重なる。のんびりとした教室の窓ガラスに、爆撃で巻き上がった赤い舌と砂塵が写る。どこか遠くの戦いの街。けれど、同じ地球の上の出来事。アンバランスな現実に不思議な気分になる。日本は平和でよかったな、ってそれだけ?もしかしたら格差が拡大して、差し伸べられた優しさにも裏があるように思えてしまうこの国のほうが末期的なんでは?...なんて。

 そのCMに Art of Noiseのこのアルバム中の曲が使われている。もしかしたらAONによる音ではなく、オーケストラによるドビュッシーの曲なのかもしれないけれど。でもね、この退廃的な映像にこの曲が合うのです。AONというと、「Beat Box」「Legs」(すっかり、Mr.マリックのテーマのようになってしまった)「Kiss」(Princeのあの曲のカバー、歌うのはTom Jones。メキメキ!)のように、タイトなビート、ロー・ビットながらも心地よいサンプリング音を思い出してしまうけど、ここで聴けるのは「無調の父」の呼ばれるドビュッシー独特の不安な、けれど美しいメロディ。。でも、やはり後ろに流れるリズムはその存在を強く主張している。

 ライナーノーツにも書かれているように、このアルバムは「時空を超えた夢のリミックス・アルバム」である。激しいラップ(Rakim)、オペラが織りなす不思議な世界も、この曲で中和されて、僕は心地よく沈んでいく。このアルバムのベスト・トラックは「Approximate Mood Swing No. 2」。
 クラッシックの香り高い佳曲(短いけど)。『Below the Waste』収録の「Robinson Crusoe」も名曲。Anne Dudleyならでは、ですね。


Art Of Noise - The Seduction of Claude Debussy - Approximate Mood Swing No. 2
Approximate Mood Swing No. 2 (1999)

 でも、やっぱりAONといえばこの曲、「Beat Box」でしょう。最初聴いた時にはYMO以来の衝撃でした。


Art Of Noise - (Who's Afraid Of) The Art of Noise? - Beat Box (Diversion One)
Beat Box (Diversion One) (1984)

 8分強の長い曲も、iTSでは150円で買えちゃうのね。いい時代になったのか...。