Provision

Provision / Scritti Politti (1988)

The Bugglesの「The Age Of Plastic」(「Video Killed The Radio Star(ラジオスターの悲劇」は、あのMTVに最初に流れた曲で有名)は、その後の音楽作成スタイルに大きな影響を与えて、パクられるだけパクられたアルバムとして必ず後世にも残り続ける名盤ですが、このScritti Polittiの「Cupid & Psyche 85」〜「Provision」も、擦り切れるくらいにパクられ続けている傑作でしょう。そのアイデアや先進性は未だに色褪せることはないけれど。

アタック(A-D-S-RのA)が強い、粒の揃った音を緻密に計算し、細かく配置して作り出すスタイルが、明らかに前作「Cupid & Psyche 85」よりも音数が少なくなった(それでもまだ多い)ぶん、さらにストイックになった感じ。音を3次元で視覚化できるゴーグルなんかがあれば、きっとクラクラしそう。弾けるようなベース、歯切れのいいドラム(ゲートエコーも下世話ではない)...、サンプリング誕生以降、試行錯誤が繰り返されてきた80年代の出した答えがこれなんだろう。お気に入りのひとつ「Bam Salute」は、野太いベースだけで始まるイントロが強烈なエレクトロ・レゲエナンバー。その他にスローでありながらも計算されたベースラインが印象的で、Miles Davisとの共演が話題となった「Oh Patti (Don't feel sorry for loverboy)」のように、エレクトロだけにとどまらない懐の深さを感じる。

YAMAHA DX-7やRoland D-50、KORG M1のような、今で言う「ハードウェア・シンセサイザー」が人気だったあの頃は、Keyboard Magazineとかに「Boom! There She Was」で使われているシンセベースのパラメータが掲載されていたり、とても幸せな時代だった(書いてある通りにセッティングしても、悲しいかな、どうも同じ音には聞こえなかったことが多かったけど)。そういえば、当時バンドを組んでおりましたが、無謀にもこの「Boom! There She Was」をコピーしていました。4人メンバー全員がキーボードという明らかに変な編成で(Depeche Modeみたい?)、結局はオリジナル曲はないに等しいバンドだったけど、楽しかったな(^_^;)。この曲では、Roger TroutmanZAPP)のトークボックス(ヴォイス・モジュレイター)がフューチャーされているけれど、そんな機材はないので声色で対応したという、おもしろ悲しい思い出があります。

みんな元気かな?

お〜っ、あの Scritti Polittiの新譜が、前作「Anomie & Bonhomie」から7年 (!)の沈黙を破ってリリースされる模様(5/29発売)。とりあえず、聴いてみなくてはいけませんね。

White Bread Black Beer

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