N.D.E (1995)

 暦の上ではもう秋、のはず。
 でも、ここへきて連日の熱帯夜で、あまりの暑さで「ん”ぁっ!」とうなり声をあげて目が覚めてしまう。べっとりと汗ばんだ体を起こして、周りをよく見ると、となりで寝ている娘の足が自分の体の上に乗っかっていた。「悪夢のもとは、これか...」

 文字通り「川の字」で寝ているのがバレてしまうが、こうして家族で並んで寝るようになる前(つまり独身の時)は、よく「金縛り」にあったものだ。軽い憑依(ひょうい)体質なのか、霊的なものを扱ったTVや本に触れたその夜には、かなりの頻度で「金縛り」に襲われた。中には、布団の中に忍び込んでくるものまでいて、必死に念仏を唱えた。ふっと体が楽になるものの、目を開けるのが無性に恐ろしく、そのまま忘れたふりをして眠りの中にもぐりこもうとした。

 そんなことが続いて、寝る時には心落ち着かせようと、アンビエントな音楽を聴きながら眠りにつくようになった。とはいっても、昨今流行りの「Image」シリーズのような癒しを与えるたぐいのものではなく、Art of Noiseや Anne Dudleyなどのビートのあるものを好んで聴いていた。
 その流れに沿ったものかもしれないけど、一時期スリーピング・ミュージックの一番の座をしめていたのが、これ。


細野晴臣 + ゴウ・ホトダ / ビル・ラズウェル / 寺田康彦

 『N.D.E』とは、"Near-Death Experience"、つまり"臨死体験"のこと。音が聴こえると、意識が回旋しはじめ( 「Spinning Spirits」)、離脱する魂を上へ上へと誘う(「Navigations」)...。僕は落ちているのか、浮かんでいるのか。この1曲目から2曲目までの展開が心地よい。心の底を這うようなファットなベース、いつのまにか心音のようにも聴こえる。あれ、これっていつか聴いたことがあるような、ずっとずっと昔に。心地よくなって、いつの間にか深い眠りに落ちる...。ぐー、ぐーすか。

 というわけで、3曲目以降はよく聴いたことがありません(苦笑)。
 今度寝るときに聴いてみたいけど、たぶんしばらくは無理だろうな。家族が気味悪がるかもしれないし(もう一度、苦笑)。